起業をする場合、まず、検討することは、会社を設立するのか、個人事業者として開業するのかという点です。

 この場合、会社設立と個人事業者として開業するのとでは、それぞれ、メリット・デメリットがあります。下記の観点から考えてみましょう。

(1)設立時の開業費用・開業手間について

(2)設立後の税金について

(3)設立後の営業や信用力の面について

(4) その他

Ⅰ.会社設立のメリット

1.税金計算上のメリット

 (1)法人税と個人所得税は税率が異なります。

 法人税・住民税・事業税の実効税率は、平成4月以降、課税所得が400万円以下の場合25%程度、400万円超800万円以下の場合26%程度、800万円超の場合41%程度です。これに対して、個人事業者の場合、個人所得税が課せられますが課税所得が多くなるとそれに伴い累進的に税率が高くなります。例えば1800万円以上の課税所得に対しては50%の税金が課せられます。

このため、課税所得が少ないうちは個人事業者のほうがメリットがありますが、課税所得が多くなると会社組織のほうがメリットがあることになります。

 (2)会社設立し、役員報酬をもらうと、給与所得控除がうけられます。

 例えば、課税標準が800万円の場合は、給与所得控除が200万円となります。給与所得控除は、サラリーマンなど給与をもらっている人の見積経費(税金計算上引いてもらえる経費)です。これに対して、個人事業者の場合、当然ながら給与所得控除はありません。代わりに、青色申告者には、青色申告特別控除がありますが、これは65万円です。

このため、「給与所得控除が200万円−青色申告特別控除65万円」の差額が135万円もあり、会社組織のほうがメリットがあることになります(ただし一定の要件を満たす会社の場合に限ります)。

(3) 個人事業者の青色欠損金は3年間ですが、会社の場合、青色欠損金は7年間控除できます。

(4)会社の場合、減価償却費の計上は任意ですが、個人事業者の減価償却費の計上は強制で、赤字であっても計上しないことはできません。

(5)会社の場合、役員退職金の支払いができます。

2.営業上・信用上のメリット

 上場会社や一部の企業では、取引開始の条件として、会社組織であることを条件にしているところがあります。また、特に、そのような条件がなかったとしても、個人事業者はイメージとして会社組織にできないほどの小規模な事業と思われがちです(個人事業者でも株式会社に劣らない立派な組織の事業者もあるのですが、一般論としてです)。このため、会社を設立し、会社組織にすると、信用力はアップいたします。

 Ⅱ.会社設立のデメリット

1.設立に費用と手間がかかります。

2.税金計算上のデメリット

(1)赤字であっても、地方税の均等割(年間7万円)がかかります。

(2)会社の場合、交際費の一部の金額が税務上損金として認められません。会社の場合、資本金1億円以下なら年600万円までで、その1割が損金として認められません。また、資本金1憶円超ならば全額損金とは認められません。これに対し、個人事業者の場合、限度枠がありません。

3.その他

(1)帳簿組織を整え、複式簿記により記帳する必要があります。

(2)会社組織の場合、一人でも社会保険に入る必要があります。

 このようなことが、会社設立のメリットとデメリットとしてあげられますが、わたしとしては事業を大きく成長させたいのならば、初めから、会社組織のほうがよいのではと考えています。

1.資本金1000万円未満の会社の節税メリットとは?  

資本金1000万円未満の会社は、会社設立後2事業年度は一定の要件を満たすと、消費税を納める必要がありません。たび重なる税制改正で、いろいろな要件が厳しく定められたことで、なかなか免税事業者のメリットをうけることができなくなりましたが、それでも、設立時に検討しておくとよいと思います。  

 なお、当然ながら、以下に記載します資本金3000万円以下の節税メリットや、資本金1億円以下の節税メリットも受けられますので、税法上は、最も優遇された会社であると言えます。

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2.資本金3000万円以下の会社の節税メリットとは?

 資本金3000万円以下の会社は、中小企業者等の機械等の特別控除という税法上の節税メリットを受けることができます。これは、新たに機械装置3.5t以上のトラックなどの設備投資をした場合、一定の条件(法人税額×20/100が限度)がありますが、取得価額の7%の税金を控除してもらえる税法上の優遇策です。 

 例えば、3.5t以上のトラック5台を1台1000万円で取得した場合には、

取得5000万円×7%350万円

350万円を本来支払うべき法人税から差し引いてもらえます

 なお、以下に記載します資本金1億円以下の節税メリットも受けられます。

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3.資本金1億円以下の会社の節税メリットとは?

 資本金1億円以下の会社は以下の様々な税法上の優遇策を受けられます。

特定同族会社の留保金課税の不適用

  例えば、当期利益が1億円となり、これを配当せずに会社に残した場合には、資本金1億円超の特定同族会社には、この留保利益1億円に対して通常の法人税に上乗せされて税金が課税されます。

 留保金課税額=3000万円×10%(1億円×60%3000万円)×15%750万円

 この留保金課税が、資本金1億円以下の会社の場合には、適用されません。

法人事業税の外形標準課税(赤字であっても資本割と付加価値割により事業税が発生する制度)の不適用

 ・法人税の計算上、軽減税率(原則19%24年度より3年間15%)が適用され、年800万円の所得に対する税率が軽減されています。

 800万円×(25.5%15%)=84円の節税(復興特別法人税は含みません)

交際費の損金不算入の計算についての優遇

 600万円×90%(交際費の損金算入限度額)が損金に算入されます。資本金1億円超の会社では、全額損金不算入となります。このため、資本金1億円未満の会社では、1億円超の会社と比べて、

 600万円×90%×実効税率37%200万円

程度の節税になると言えます。  

 少額減価償却資産(年間の上限300万円) 30万円未満の減価償却資産は全額取得時に損金に算入されます。ただし、償却資産税上は把握し、申告しなければなりません。

各種の税額控除の適用があります。 

中小企業者等の試験研究費の特別控除

 試験研究を行った場合の費用について、一定の条件(法人税額×20/100が限度等)がありますが、試験研究費の12%の税金本来支払うべき法人税から差し引いてもらえます

中小企業者等の教育訓練費の特別控除

 教育訓練を行った場合の費用について、一定の条件(法人税額×20/100が限度等)がありますが、教育訓練費の12%の税金本来支払うべき法人税から差し引いてもらえます 

中小企業者等の機械等の特別償却

 一定の条件がありますが、機械等の取得価額の30%を特別償却として減価償却することができます。

 このように、会社の資本金の大きさによって、税法上の節税メリットは随分と異なってきます。小さく生んで、大きく育てるならば、会社設立時は、資本金は少ないほうがいろいろと節税メリットはあります。ただ、資本金はできるだけ、大きいほうが、会社の信用や営業政策上はメリットがあると思います。

 したがって、今後の事業展開や資金調達、営業政策上のメリットなどを考えて、最適な資本金で設立したいものです。

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